クリスマス・ハネムーン【ML】
「彼は、助手だ。
 職場でも私のスケジュール管理を担当してる部下で。
 佐藤明仁(さとう あきひと)という」

 ハニーの紹介に、佐藤は、僕に軽く頭を下げた。

「私が現在研究しているのは。
 眼鏡なしで見ることができる、3D対応立体画面の研究だ。
 つい最近。
 その画面に適したプラスチックが、海藻から出来ることが、判明した。
 だから、私は、佐藤君と最適な海藻を探して。
 あちこち歩いているのだが……」

 そう、手短に説明して。

 ハニーは、佐藤に向き直った。

「私は本当に休暇だ。
 例の海藻は、北半球と、赤道直下のみに生息していて、現在は南半球には確認されてない。
 だから、仕事が追いかけてこないように、私は休暇の場所を。
 他でもない、オーストラリアに選んだつもりだったのだが?」

 そんなハニーの言葉に、佐藤は、にこにこと笑った。

「その海藻は、まだ生産量が低い上。
 各社の利権がかかって来るので、必要量の確保が難しいです。
 でも、もし、このオーストラリアで海藻が見つけることが出来たら。
 そして、我が社と上手く契約することが出来たら。
 莫大な利益になりますよね?」

「……」

「しかし、日本は、捕鯨問題を抱えています。
 オーストラリアでは調査捕鯨について、大きく反感を買っている以上。
 日本企業の名前を背負って、海洋調査をすると、現地の環境保護団体の神経を逆なでしかねません。
 ですから博士は、『個人旅行』の名目で、ここに来たんじゃないですか?」

 ……なんだって!?

 佐藤の言葉に、ハニーの様子を見れば。

 難しい顔をしたまま、特に反論することもなく、黙ってる……なんて。


 ……ウソだろ!


 じゃあ、この旅行って何なんだよ?


 僕のためだけのハネムーンだなんて、ウソで。


 仕事のついで、だったのか?
 
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