クリスマス・ハネムーン【ML】
 

 ……知ってる。


 だから、ハニーはいつも。


 僕に向かって心を砕くときは。


 かけひきも、何もなく。


 自身の熱に浮かされるまま。


 ただ一直線にやってくるんだ。


 岩井逮捕の手際から鑑みると。


 まったくもって信じられないけれど。


 それはとても、不器用な、熱さで。




 普段、基本は何でも出来る、ハニーには珍しく、口をへの字に曲げて考えて。

 何か思いついたらしい。

 彼はすぐに、にこっと笑った。


「そうか、これからは色恋に長けた君が。
 私に教えてくれればいいのだ」

「……は?」

「だから。
 君を積極的にやる気にさせる、効果的な口説き方を教えてくれ。
 そうだな。
 今まで、ただ、私が螢のカラダを貪ってただけのような気がするから……
 今度は君が、私を味見したくなるような。
 大人の余裕が出る、なるべくロマンチックな方法が良いな」

 そんなコトを大真面目に。

 しかも楽しそうに話すハニーに僕は、ため息をついた。

「……ハニー。
 あんた、やっぱり莫迦だろ?」

「なんだ?」

 僕の言葉に、ハニーは首を傾げた。

 ……判ってない。

「どこの世界に、口説こうと思う本人から、口説き方を教わるヤツが居るんだよ!」

「……あ」

 ようやく自分の間違いに気づき。

 そのまま固まるハニーに僕は、呆れた。

「……とりあえず、ハニーの想いは、判ったから。
 あんたの苦手な『ロマンチックな口説き文句』は、すっ飛ばしても、ま、いいや」

「……でも、それではあまりに雑では……」

 戸惑うハニーに、僕は、肩をすくめた。

「いいよ、別に。
 今更、そんなの考えなくても。
 いつも、地で言ってくれるじゃないか。
 聞けば、赤面ものの歯の浮くようなセ・リ・フ」

「~~」

 なんだかハニーの顔が紅くなったのは、気のせいだろうか?



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