クリスマス・ハネムーン【ML】
 僕は、構わず、ハニーの首に、自分から腕を回した。

「……でも、好きだよ?
 ハニーの言葉は、心からの声だ。
 どんなに飾った口説き文句よりも僕の心に直接届く」

 僕は、背伸びをして、ハニーの額に、自分の額をそっとつけた。

「ハニーが、本当に望むなら。
 今日は、これから僕が、主導権を握る。
 口説き方なんて教えてやんないけれど。
 僕は、あんたの知らない、恋人の愛し方を、山ほど知ってるよ?」

 言って僕は、微笑んだ。

「どんなヤツでも、絶対鳴くほど。
 気持ちのイイコトばかりを選んであげる。
 ……試してみるかい?」

「……」

 僕が、更に近づくと、ハニーの咽喉がごくっと動いた。

「……もとから……キレイだとは思っていたが……
 今の君は……ぞくぞくするほど妖艶だ。
 ……私の腕の中に『王子』が再臨したのかな……?」

 呆然とつぶやくハニーに、僕は小さく笑った。

「……雪の王子は、廃業したぞ?」

「では、君は。
 人魚姫を愛した船上の王子だ。
 シーツや上掛けの波が踊るベッドの海で、私を導いてくれるのだろう?
 ……それとも、君が溺れてしまうのかは、判らないが」

「……ハニーが人魚姫?
 それは、嫌だな。
 ……泡になって消えられたら、僕だって、海に身を投げる」

 思わず強くハニーを抱きしめた手を。

 彼は笑って、ぽんぽんと叩いた。

「……結末がどうなるかは、私たちの頑張りいかんだろう?
 王子に振られたヨーロッパの人魚姫は、泡になったが。
 王子の愛を勝ち取った、ネズミのマークが入ったアメリカン人魚は、大冒険の末に結ばれて、ハッピーエンドだ」
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