クリスマス・ハネムーン【ML】
「海にいるときの螢は、まるで。
 人魚姫みたいだった」


 ……は? 何だって?




 スキューバの全装備が二十キロあったとしても、海中では浮力で軽い。

 けれども、空気中に上がれば。

 その重さが、潜水で疲れたカラダに身にしみる。

 先に、ハニーが肩を使って僕を船に押し上げ。

 次に、僕がハニーの手を取って、船上に引き上げてる最中だった。

 ハニーが、いきなり僕を人魚姫 呼ばわりしてくれるもんだから。

 思わず、そのまま手を離し、ハニーを海に落としてしまうかと思った。

「ああ?
 なに寝ぼけたことを言ってるんだ。
 半魚人の間違いだろ?」

 照れる、というより、呆れる。

「ハニーの目はどこについてるんだ?
 いや、目をつぶっていても、散々僕の素肌に触れているから、判るだろうに。
 僕は、姫なんかじゃねぇ。
『王子』だ」

「それは、悪かったな」

 なんて。

 莫迦な事を言い合いながら。

 やっぱり、ハニーは、僕を『姫』なんて言うあたり。

 本当は僕が女の子だったら良いのにと思っているのか?

 と、思った。

 考えれば落ち込む。

 そんな思いを振り払うように。

 やや乱暴に、ハニーを、船の上に引き上げれば。

 ハニーは、装備をすっかり外し、ウェットスーツ一枚になったとたん。

 甲板で、ごろんと仰向けに寝転がってしまった。

「濡れたまま寝転んで、風に当たれば風邪を引くよ?」

 一応、言ってはみるものの。

 すっかり動く気がなくなったらしいハニーに、僕はバスタオルを投げた。

 そのタオルは、丁度良く、胸の所に落ちたのに。

 ハニーは、手を伸ばそうともしない。

「どうした?
 ハニー?
 かなり疲れたのか?」

 
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