クリスマス・ハネムーン【ML】
 いつも、博士と呼ばれて、世界中を駆け回るハニーには。

 男で表に出せない僕よりも。

 本当なら、女性のパートナーが似合うに決まってるじゃないか、と僕は思ってる。

 ハニー愛されるにふさわしい。

 本物の女性になりたい、と思う心は、強く。

 僕の心を焼いたけれど。

 それはどんなに願っても無理なこと。

 今は愛されて夫婦ごっこをしていたとしても。

 いつかは、ハニーにふさわしい女性が出現し。

 僕は、捨てられるのかもしれないと不安だった。

 それに、また。

 以前は、一人寝をする暇もないほど。

 女性相手に普通に、sexをしていたはずなのに。

 ハニーと抱き合えば、ネコ、と言う。

 タチ(攻め)のハニーを女みたいに受け入れる側の役割になった僕にとって。

 本物の女性になりたい、と思ったことを。

 ハニーにとはいえ、誰かに言うなんて。

 僕に最後に残った、なけなしの。

『男』としてのプライドが許さなかった。

 だから。

「螢?」

 ……って。

 僕の顔を見つめるハニーに。

 何も言うことなんて、出来なくて。

 僕は、不安を断ち切るように、今度こそ。

 ハニーの手を自分から、振り払おうとした。

 ……のに。

 ぐぃ、と掴まれた手を剥がそうとしたとたん。

 ハニーが、変な方向に力を込めたから。

 体重移動を失敗し、僕はバランスを崩した。


 うわわっ!


 却って、ハニーの胸に倒れ込みそうになる。

 それだけは避けようと、自由な方の手を、ハニーをまたいで、甲板についたのに。

 その手を、ハニーにナギ払われた。

「痛て!」

 女の子が可愛くしなだれかかる、というよりは、モロに。

 鼻をハニーの胸に打ちつけ、涙目になった。
 
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