クリスマス・ハネムーン【ML】
「なにするんだよ!」

「顔を打ったか?
 それは、悪かった」

 がばっと跳ね起き、抗議しようとした僕を。

 ハニーは、そのまま両腕に抱きしめ、捕まえた。

「ちょっ……ハニー?
 放せったら!」

 このボートに乗っているのは、僕たちだけじゃない。

 人目を気にして、じたばたともがく僕を、放さずに。

 強く抱きしめながら、ハニーは言った。

「女性が好みのはずの螢を強引に抱いて、私は君を手に入れようとした。
 それでも足りなくて。
 籍に入れて縛りつけたのに。
 結局、君は、私のモノになってくれない。
 油断をすればすぐ。
 君は、この手をすり抜けて、どこかに行ってしまう」

「ハニー……?」

「私は……私は。
 これ以上、一体、何をしたら良いんだろう?
 どうしたら、螢なしでは、もう。
 生きていけないほど愛してると。
 君に伝えることが出来るんだろう?」

 端正な顔の眉間に深々としわを刻み。

 まるで、泣きそうなほど真剣な顔をしているハニーを見て、僕はため息をついた。

 僕たちは、莫迦だ。

 ちゃんと愛し合っているはずなのに。

 余計な心配をして、お互いに傷ついてる。

 女になりたかったんだ、なんて。

 そんなコトは、絶対言えないけど。

 ハニーを愛してるってことは、本当だから。

 僕は、ハニーの腕から逃げだそうとするのをやめて、彼をまっすぐ見た。

「僕だって、君のコトが好きだよ。
 本当の本気で、愛してる」

「本当か?」

「ああ。
 だって、そうじゃなければ。
 僕がおとなしく、男の腕の中なんかに収まっていると思う?
 言っておくけど、僕はかなりモテるんだからね?
 ハニーだけじゃなく。
 僕に血迷った莫迦な男も、たまにはいたけど。
 今は、全員東京湾に沈んでる」

 なんて。

 そう、おどけて笑いながら言った僕に、ハニーも小さく笑った。

「螢は……怖いな」

「ナニをいまさら。
 全部知った上で僕を抱いたくせに」
 
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