クリスマス・ハネムーン【ML】
「別に。
 あの時私は、君、以外。
 何も欲しくなかったからな」

 そう。

 まだ僕たちが恋人同士とは言えなかった時に。

 例え、その『恋』の対価に『命』を支払うことになったとしても。

 絶対に後悔しない、と叫んだハニーの声が蘇る。

「あの時は、そうだとしても。
 今は、どうなんだよ?
 長く付き合って、そろそろ飽きた?」

 そう、意地悪く言う僕に、ハニーが、首を振る。

「想いは、募る一方だよ。
 苦しいほどに。
 しかし、君が居るだけで、基本、私は満足だから」

 言って、ハニーは目を伏せた。

「でも今は、あの頃より、命が惜しい、と思う……
 君と一緒に生きるために」

 う……

 良く聞かなくても、歯の浮きそうなセリフをさらりと言う、ハニーに。

 僕は、とうとう力が抜けた。

「……やっぱり、ハニーは、莫迦なヤツだ、と思う」

「結局、そこに落ち着くのか?」

 そう、諦めたようにため息をつくハニーが愛しくて。

 僕は、こっそりささやいた。

「……ね?
 目をつぶってくれる?」

「なんだ、螢からキスをしてくれるのか……めずらしいな。
 しかも、ここは、人目があるのが嫌なんだろう?」

「人に見られて、困るのは、本当はハニーだけなんだよ?
 僕は、関係ないし。
 嫌なら、この旅行中、僕からキスなんて、絶対してやらないから」

 べぇ、だ。

 と、舌をつきだす僕に、ハニーは、一瞬ほっとしたように、微笑んで。

 それから、にやり、と笑った。

「だんだん調子が出て来たじゃないか。
 じゃ、濃厚なヤツを是非頼む」

 そう、ほくほくと目を閉じるハニーに僕は呆れた。

「……莫迦だな。
 唇に、ちょっとかするだけ、決まってるだろ?」

 とは言え。

 ちゃんと、ハニーの唇に唇を重ねるべく。

 身を乗り出したときだった。
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