クリスマス・ハネムーン【ML】
「あ……あの。
 一体、相模さんは、何をしているんですか?」

 もう少しで、僕の唇が、ハニーの唇に着地する、っていう寸前だった。

 僕たちの斜め後ろから、近づいて来たかと思うと。

 戸惑った声を上げるヤツがいた。


 佐藤だ。


 ボートを沖に出すにあたり、頼まれもしないのに。

 勝手に操舵の担当を希望したコイツは。

 僕たちの居る舳先(へさき)の反対側。

 とも、の方で、今までアンカー(錨(いかり))の様子でも、見てたらしい。

 自分の仕事を終わらせて、海から上がった僕たちのフォローに来れば。

 僕とハニーが、軽く、とは言え。

 抱きしめあい、キスをしようとしている姿を目の当たりにしたんだ。

 たぶん、今まで一度も見た事なかったんだろう。

 男同士のキス、直前の光景が相当ショッキングだったらしい。

 見ないふりをしてくれれば良いものを。

 佐藤は思わず、みたいに声をかけて来やがった。

 くそ!

 いくらなんでも。

 ハニーの助手に『見れば判るだろ!』と怒鳴るワケにもいかず。

 僕は、渋々ハニーから離れて、低く声を出した。

「海から上がったので、霧谷さんのバイタルサインのチェックをしてました」

「は?
 バイタル……何ですって?」

「バイタルサイン!
 呼吸や、脈なんかでカラダに異常ないか、調べてたんです!
 霧谷さんが、調子を崩したら、困るでしょう!?」

 僕の言葉に、とりあえず。

 目の前の出来事が自分の思考出来る範囲に収まったらしく。

 佐藤は、あからさまに安心したような顔をしやがった。

「そうでしょう、そうでしょう!
 なんだか、見てるこっちが、ドキドキしましたが。
 バイタルサインですか?
 なるほど!
 それなら別に、何もおかしくはないですよね?」

 佐藤は、うんうん、と、激しく頷いた。

「それで、霧谷さんの様子は、どうですか?
 これから、晩さん会には出られますよね?」

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