クリスマス・ハネムーン【ML】
 うぁ、怒ってる。

 ハニーが、こんな変な口調で話している時は、大抵。

 ものすごく怒っている時で。

 思わず、上目遣いでハニーを見れば、緑色の目が据わってた。

 危険だ。

 僕は、思わずしどろもどろと、言い訳を始めていた。

「ほら。
 肝機能の方は、この前の検査でほぼ基準値内だったし。
 アルコール依存症の方も、だいぶ改善……」

「……されてても、飲んでしまえば、全部台無しだ」

 うう。

 ハニーは、酒を一滴たりとも飲まないから、そんな冷たい声で言うんだ。

 お酒は美味いんだよ~~

 ジュースよりも甘く無く、お茶よりも優しい。

 飲めば楽しい天国の味してる。

 それだけじゃない。

 お酒の一番良い効果は。

 飲めばどんな場所でも眠れるってことだ。

 僕は、ちょっと飲み過ぎて、色々失敗しちゃったけれど。

 量さえ守れば、これほど頼もしいモノはない。

 僕の考えている事を読んだのか。

 ハニーは、低く声を出した。

「……それで、螢君は、今度は何から逃げようとしたんだね?」

「べ……別に、何からも逃げてないって!」

「でも、飲んではいけない酒を飲んで、無理やり眠ろうとしたんだろう?」

「そんな、大げさなことじゃないよ!
 だいたい、なんだよ!
 籍を入れて、初めての夜なのに、こんな飛行機に押し込んで!
 ハニーなんて、僕にかまわず。
 飛行機が着くまで隣の女の子と仲良く眠ってればいいじゃないか!」

 ムッとして声を若干荒げたとき。

 さっきから、僕に寄りかかって来ていた白人男が、また、のしかかって来た。

 くそ!


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