クリスマス・ハネムーン【ML】
「……それだけ、螢が、酒に弱くなったんだ」

「……まさか……」

 その可能性を否定するように、思わず、クビを振れば。

 ハニーが、軽く僕を睨んだ。

「嫌酒剤を使って、アルコール依存症を治すと。
 まれに、体質が変わって、酒を全く受けつけなくなるヤツが出る。
 そんなことは、螢もDrに聞いて知っているはずだ。
 君のは、まさに、それだよ」

「それだよ、なんて、簡単に言うな!
 僕が、どれだけ飲んだのか、ハニーは、知らないくせに」

 僕は、ワインをボトル半分も飲んでない。

 こんな少しの量で、調子を崩すなんて。

 客に酒を飲ませて、一夜の偽りの恋の契約をする。

 『雪の王子』だった頃には、考えられないことだった。

 変わってしまった自分の体質に、呆然としていると。

 ハニーが、僕を改めてきつく抱きしめ、ささやいた。

「……螢は、もう。
 雪の王子には、戻れない……私が、戻さない……」

「ハニー……」

 僕の声は、ハニーの唇にふさがれ言葉にならなかった。

 さっきまでの、羽が触れるようなキスじゃない。

 深く、強い。

 舌を使った愛情が、僕を犯してゆく。

「……は……っ……」

 長い口づけから、ようやく解放されて。

 言葉の代わりに出た。

 ため息とも、あえぎ声ともつかない吐息をついたとき。

 ハニーは、僕の耳に息を吹きかけるように、ささやいた。

「さっき、佐藤君の前で、螢が上半身をさらしているのを見たとき。
 私の胸は、張り裂けそうだった」

「ハニー……?」


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