クリスマス・ハネムーン【ML】
 
 ぐぃーー!


 腹立ち紛れに、つい、今までよりも力一杯押し返したら、強すぎたらしい。

 今まで、ぐーすか眠っていた白人男は、目が覚めると、不機嫌そうな顔をした。

 やば。

 どうやら、眠っているところを起こされて、腹を立てたみたいだ。

 だけども。

 こっちだって、何度も押されて気分は良くないんだ。

 戦(ャ)れる相手かな……?

 つい癖で。

 険悪な表情で僕を睨む男が、喧嘩のできる相手かどうか、力量を推し量る。

 すると。

 げしっ!

 と。

 いつの間にか。自分の席から立ちあがってたハニーが、無言で僕の頭を殴った。

 かなり、痛い。

「ナニすんだよ!」

「うるさい。君は、また手荒なコトを考えていただろう?
 こんな狭いところで騒ぎになったら、迷惑だ」

 怒る僕に、緑の瞳が一瞬細くなったかと思うと、次の瞬間。

 ハニーは、白人男に、にこっ、と。

 まるで花が咲いたようにほほ笑み、呼びかける。

「Excuse me……」

 僕の貧弱なリスニングでは、良く判らなかったけれども。

 どうやら、ハニーは男と席を代わってくれ、と言っているらしい。

 最初は、怪訝な顔をしていた白人男も。

 ハニーの穏やかな交渉でほどなく、機嫌が戻る。

 そんなに長い時間をかけずに、二人は握手をしてあっさりと席替えが完了した。

 決め手は、ハニーの席の隣が、かわいい女の子だったから、のようだ。

 そうだよな。

 普通、男だったら絶対。

 男の隣より、女の子の方がいい。


 ……なのに、ハニーは。

 この男は、僕を選んだ挙げ句、籍にまで入れやがったんだ。
 
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