クリスマス・ハネムーン【ML】
 身についた習慣に、自分で呆れながら。

 カジノの入口を見れば。

 そこには強面の、いかにもヤクザな兄貴たちじゃなく。

 上品な、ドアボーイが遊びに来た客を迎えてる。

 僕は、ほとんど英語が読めないから判らないけれど。

 記号化された絵文字には、未成年と、酒気帯びの他に、水着やビーチサンダルじゃなければ、誰でも入店していいらしい。

 僕に、その禁止事項はみあたらず。

 暑さを避けるついでに出入りしている、他の観光客と中に入ろうとした。

 ……のに。

 なぜか。

 中に入る寸前で、僕だけ、ドアボーイに止められた。



「ええっと~~?」

 ドアボーイが、断固として入れまいとしている所を見ると。

 どうやら、僕は禁止事項のどれかに引っかかっているらしい。

 絵文字の部分以外に、何かあるんだろうか?

 あとは、敢えて、僕が公共施設に入って困ることは、無いはずだった。

 裏世界に居たときの罪は。

 極道から、医療関係への大転職の時。

 ガキの頃からいろんな意味で世話になっている、親父みたいな刑事が調べ上げ。

 その全てを償っていることに太鼓判を押し。

 ハニーと一緒に頭を下げてくれたから。

 僕が看護師養成の専門学校なんぞに入れたことを考えれば。

 以来、駐禁さえも罪を犯してない僕が、国際指名手配犯としてここで拒否られることがないはずだし。

 知れば、誰もが普通、一歩……いや、二歩は引く。

 背中の刺青だって規定の服に隠れて見えないはずだった。

 しかも!

 警官らしい制服のヤツ、来るの早すぎ!

 別に僕は、ドアボーイとモメても、乱闘はしていないのに!
 

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