クリスマス・ハネムーン【ML】
　もちろん、現在の日本では、男同士結婚できる法律はない。

　どちらかが、手術をして完全に女の形になれば。

　戸籍の性別を変えるコトもできなくはないが。

　僕たちは、二人とも。

　手術どころか、女装をする趣味もなかった。

　なのに、ハニーが僕を自分の籍を入れた方法は。

　昔から、同性愛者の人々がやって来た最終手段。

　僕を自分の養子にしてしまったのだ。

　つまり。

　正確に言うと、僕たちの関係は。

『夫婦』ではなく『義理の親子』ってコトになる。

「本っ当に、莫迦なヤツ」

　見るヤツが見れば、一発でゲイだ、と判る形に自分の戸籍を汚し。

　今だって、かわいい女の子がいる席から、いそいそと。

　僕の隣に引っ越ししてくる男の顔を見ながらつぶやけば。

　ハニーは、ふふん、と鼻を鳴らした。
　
「私に向かって『莫迦』と言う人間は、そうはいない。
　君に言われるたび、一々新鮮だ」

　そう、怒りもせず返す、ハニーは。

　確かに、一流大学を主席で出た上。

　現在も最年少記録を何度も塗り替える研究活動をしているらしいから。

　彼に面と向かって『莫迦』と言うヤツなんて、まず居ないんだろう。

　それでも、やっぱりハニーは。

　世間一般とは、感覚がずれている感じがする。

　だから、きっと。

　僕みたいな、間抜けな男に捕まるんだ。
　
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