クリスマス・ハネムーン【ML】
 この病室の主、佐藤宛に届けられたっていう財布を見るなり、叫んで待った僕に。

 佐藤と、ジョナサンの声が、かぶった。

「何ですって!」

「Oh~~!
 それは、間違い無いですか?」

「……ああ」

 だって、それは。

 一目見れば判るもの。

 このクリスマスに、僕がハニーにプレゼントした、財布だ。

 金や、カードの他に大事な薬も財布にしまうクセのあるハニーが使いやすいように。

 小銭や紙幣を入れる所とはまた別の出入り口があり。

 かつ。

 そんなに大きくならないヤツを探して、店を何軒も回ったから、間違い無い。

 たぶん。

 僕にかけた電話が思うようにつながらず。

 確かにハニーを預かったって証拠に、誘拐犯か届けたモノに違いなかった。

 つまり、これがここにあるっていうことは……!

 僕は、自分が一気に青ざめるのを感じた。

『不安』を解消すべく。

 慌てて、その財布を手に取ろうとして、ジョナサンに止められた。

「犯人の指紋がついているかもしれません。
 証拠を消さないために、お師匠さまは触ってはダメです!」

「じゃあ、今財布を持ってる警官に、その財布の裏のチャックを開けさせて!
 中に薬が入っているかどうか、すぐに調べてくれ!」

 僕の必死の声に、ハニーの財布が開けられた。

 ……その中には。

 現金は、小銭に至るまで一切無かったけれども。

 カードの類は、手つかずで。

 それと一緒に……絶対見たくない現実が、突きつけられる。

「ハニーの薬が、丸々出てきやがった……」

 ……つまり。

 朝早く、出がけに飲んで以来、ハニーの手元に薬が無いってことで。

 昼を過ぎれば、ハニーは調子を崩し。

 遅くとも、明日の夜明け頃までに少しでも飲んでおかないと。

 後は坂道を転げ落ちるように、ハニーの容態が悪化するっていうことだった。

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