クリスマス・ハネムーン【ML】
 ハニーは、僕の隣の席に居心地良く座れるように。

 色々クッションをセットして落ち着くと、肩をすくめて言った。

「ほとんど君と相談もせずに、オーストラリア行きを決定したことは、悪かった」

「ソコは、別に怒ってないよ。
 ハニーと違って僕は、ほとんど海外(そと)に出たことないし。
 一度、南半球には、行ってみたかったから。
 それに、そもそも。
 ちゃんと相談をしようにも、キミは、忙しくて、日本にも居なかったし。
 でも、僕としては。
 何も、ここでどたばた出なくても、一日くらいハニーとゆっくりしたかったな、と思っただけで」

 そんな、僕の言葉を聞いていたハニーは、ふ、と小さく息を吐いた。

「……そうだな。
 あと一日、遅い便だったら。
 せっかくのハネムーンを、こんなエコノミーシートで狭い思いをしながら行かなくても良かったんだ。
 今日は、一杯だったけど、明日だったらファースト・クラスが空いてた」

「じゃ、なんで、急いだんだよ」

 ファースト・クラスだったら座席が、エコノミーよりも格段に広い。

 だから、誰からも寄りかかられたりすることが無いし。

 関西空港からシドニーまでの、案外長い飛行機の旅(フライト)を、もっと快適に過ごせるはずだった。

 ぷう、と思わず膨らんだ僕の頬をつついて、ハニーの瞳が、微かに曇る。

「イヴの午後から、クリスマスにかけて、日本には雪が振るからだ」

「……は?」

「本当は、螢君。
 雪がキライだろう?
 特に『ホワイトクリスマス』なんて言ったら、最悪にマズイくらいダメなはずだ」

「……」

「だから、毎年は無理だとしても。
 家族になって、初めの、ハネムーンくらい、絶対雪の降らない場所で君と過ごしたかったんだ」

 ……

「……それは……まいったな」
 
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