クリスマス・ハネムーン【ML】
 いざ、海面に飛び込もうと、身を低くしたときだった。


「螢さん!
 あなた、そんな格好をして、どこに行くつもりなんですか!」

 鋭く囁く声に、振り返れば。

 さっきまで、ジョナサンと作戦会議をして居たはずの、佐藤が。

 僕を上目使いで睨んでいた。


 ……本当に、もう、コイツは!

 いつも、いつも良い所で!


 僕は、渋々振り返ると、ぶっきらぼうに言った。


「……どこに行くかって?
 ちょっとそこらへんの海を散歩だよ?
 せっかくリゾートに来たからナイト・ダイブでもしようと思って」

「ん、なの!
 誰が信用すると思っているんです!
 螢さんは、警察官の話をちゃんと、聞いてましたか?」

「さあ?
 僕は、言葉なんて、判らないし?」

「螢さん!」

 判っててうそぶく僕に。

 佐藤は、小声のまま。

 声色を荒げて、ささやきかえした。

「勝手なことをすると、霧谷博士の命に関わるって判ってますよね!?」

 そんな、佐藤の声に。

 僕の表面だけだった冷静さが、完全に失われた。

「……悪いけど。
 何もしなくたって、命に関わるんだよ!」

 ……佐藤だって、ハニーのそばに居たんだ。

 ことの重大さは、判ってるはずだった。

 睨む僕に、佐藤は呆れたような声を出した。

「だから、海から霧谷さんの居所を探し……せめて薬だけでも渡そうと考えたんですか?」

「そうだよ!」

「霧谷さんの正確な居場所は、知ってるんですか?」

「ハインリヒとは、家族だからね。
 ジョナサンから、聞いたよ!」

「それで、倉庫の住所や、ガレージの名前をちゃんと読めるんですか?
 ここには当然。
 漢字やひらがな、なんて一字もありませんからね?。
 あなたの苦手な、アルファベットのみで、書かれてますけど?」

「……」

 むすっと、ふくれた僕に、佐藤はため息をついた。

「……わたしも、一緒に行きます」




 ……は?

 なんだって?

 
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