クリスマス・ハネムーン【ML】
 ハニーに指された図星に、一瞬、思考が停止し……次に。

 僕は、記憶を払うように、クビを振った。

「ハニーは、そんなに、僕がヤワなヤツだと思ってる?
 雪、なんてただの自然現象じゃないか。
 雨と同じで、うっとうしいけど、別にナ二も感じてない」

 そのセリフを紡ぐ声が、少し。

 かすれているなんて、僕は、認めない。

「それに僕が、水商売をしていた時。
 なんて呼ばれてたか、覚えてる?」

「ああ。雪の王子(スノー・プリンス)だろう?。
 接客している所は、一度しか見てなかったけれど。
 ……すごくキレイだった」

 ハニーが、少し遠くを見るように僕を見る。

 その視線が、恥ずかしい。

「そんなモノ。
 髭を剃って、化粧して、上手い照明の下に入れば。
 どんなジャガイモみたいな顔でも『騎士(ナイト)』だし。
 僕が王子なら、ハニーは、王(キング)が張れる」

 でも。

 言いたいことは、それじゃない。

 僕は、いらいらと、手を振った。

「それは、ね。
 別に、僕が雪の王子って呼ばれるのは。
 ステージで、ツンケンお高く止まって。
 言い寄って来た誰も、彼もを、振りまくってたから、ばかりじゃないんだよ?
 なのに『雪の王子』が雪を怖がってたら、話にならないじゃないか!」

「……知ってる」

 ハニーの静かな声はすっかり『大人』で。

 騒ぐ僕は、ものすごくガキに見える。

 そんな自分自身が恥ずかしかった。

 だからやっぱり、僕は、ハニーに八つ当たる。

「あんたが僕の『ナニ』を知ってるんだ!
 十歳年上って言ったって。
 その分、ずっと顕微鏡を覗いているか。
 難しい方程式を解いているだけで、世間なんて見たことないくせに……!」
 
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