カウントダウン
ニマニマとあやしい笑みを浮かべてランチボックスを奪う山崎祐介はおもむろに広げた。
「…………」
「……なによ。勝手に奪って文句言いたいの?」
パチンと蓋を開けた山崎祐介は中味を見たまま固まっている。
「……ふーん」
「だから何よ……」
「いいのは見た目だけ、ってか?」
「むかっ……」
ムカツク。ニヤリと笑うその姿が私の全てを否定してるみたいで……。
だけど両手を合わせていただきますと挨拶をする彼に反論なんて出来なかった。
あ……でも、“いいのは見た目だけ”
つまり、見た目は好印象って事?
マズイと言われてきたから、それだけでも救われた気分。
「何ニヤニヤしてんの変態ちゃん、もしかして毒入り?」
「違うからっ!!てか変態はやめてよ」
「はいはい、分かったよ彩音」
「ちょっ……」
呼び捨てかよ。まあいいけど。
こっちのイライラを知ってか知らずか、山崎祐介はお箸を持ってだし巻き玉子に手をつけた。
そして一口で頬張って、一度噛み合わせたあと私を凝視。
「な、なによ。なにか変なの?やっぱり……」
凝視したままモグモグと口を動かす彼に、不安な気持ちが膨らんで破裂しそう。
苦しい沈黙……。