カウントダウン
「…………」
「…………」
だし巻き玉子をゴクンと飲み込んだ山崎祐介は、その後無言でモッシャモシャと食べ続けた。
なんだろ、やっぱりおいしくないのかな?怖いもの見たさで食べるとか言った手前、後に引けなくて、取り合えずかっ込んでしまえ的な?
なんかだんだん悪い事しちゃったっていたたまれなくて顔を上げられない。
さっきまでのイライラも消えて、どうしようもない不安に侵される。
せめて口直しのために、ペットボトルのお茶を渡したら、黙々と食べてた箸の動きが止まった。
「……サンキュ」
「あ、山崎君……無理、しないでね?残していいよ」
「名字とか、聞き慣れねぇから止めろ。てか無理って何?」
「どうせマズイんでしょ、無理して食べなくていいよ祐介」
「いきなり呼び捨てかよ。様つけろよ。てか無理してねーし」
「祐介だって私の事呼び捨てしたじゃん。様?何様よ。あーもーお腹空いた、私もいただきます!」
「何様だぁ!?祐介様だよ、まぁいいや」
訳の分からない俺様はお茶を飲んでからまた箸を進めた。
「…………」
「…………」
「なあ彩音……」
「なあに祐介……」
「……アイツとは別れろ」
「なんで?」
「てかアンタはさ、何で付き合ってんの?ハタからみても愛されてないって分かんのにいつまでもしがみついてるのは悠斗の彼女って肩書きが欲しーワケ?」
ヘラヘラとしてた祐介は、急に冷たい視線に変わっていて、刺すように私を見つめていた。
「そんなんじゃないよ。好きだから別れないんだよ」
今までは。どんなに辛くても、やっぱり好きな気持ちには変わりなかった。