カウントダウン
祐介は、ただ穏やかに笑っている。
私もつられて笑って、この海にくる前にたくさんの涙を流していたことなんて忘れるくらい穏やかな時間が流れていた。
風になびく髪をそっと撫でてくれる祐介の大きな手にドキドキしながら見つめれば、さっきまで穏やかに笑っていた祐介の表情は苦しそうに眉を寄せていた。
「祐介……?」
「悪い、俺が待てない。悠斗ともう、別れて……早く俺の女になってよ」
苦しそうな表情は、言葉を紡ぐ度に一層苦しそうになって、髪を撫でてくれた掌は後頭部を触れている。
でも、それ以上の事はしない。違う、出来ないんだ。
祐介は自分の事を優しくないと言いながら、本当は他人を思いやる気持ちは十分なくらいある。
私は祐介の気持ちに、どうやって応えてあげればいいんだろう。
本当はいますぐにでも、応えてあげたいのに……。