カウントダウン


夢の中の私は受付まで歩いて父親の名前を伝えている。

場面は直ぐに飛んで、待ち合わせたカフェの中。驚く事に父は穏やかな笑顔をみせて分厚い封筒を私に渡している。


「すまなかった、お父さんのせいで苦労かけたね彩音。もう、こんな事がないようにするから。今日は家に帰るよ。夕飯はお父さんの好きなしょうが焼きにしてくれないか?」


その言葉に笑顔で頷く私。

夢じゃ、ない?


なんてぼんやりと思った途端、意識が現実へと戻された。


「やっぱり夢、だよね……」


時計を見れば起きる時間で、急いで支度を始めながら現実は、残酷なものだったと改めて思い出した。


本当は穏やかな笑顔なんかじゃなくて険しい顔。チラチラと時計を気にしてばっかりで、カフェに着いてから第一声は


「学校はサボったのか?どうせろくに行ってないんだろ?高い授業料払わせてなんだと思ってるんだ」


私の事一切知らない癖に、どうしてそんな事を言うのか分からなかった。
会社で待たれた事が不快だったらしい。だけど、電話だって出てくれないから休んだ事もしょうがなくだったのに、何度説明しても信じては貰えなくて。


本題の30万円の事、母親とのやりとり、そして悠斗の名前は伏せたけど友人が支払ったからそれを返したいと伝えた時、父が乱暴にグラスを置いて氷が飛び出た。


「そうやって、お前は平気で嘘をつくようになったのか!?お前には学費と生活費を支払っているだろ。学校へも行かずに金の催促、しかも30万。親を馬鹿にするのも大概にしろ!!」



全く信用してくれない。
本当の事だって言っても、母親に連絡してみてってお願いしても、全く聞く耳を持ってくれなくて。挙げ句……




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