カウントダウン
空元気かもだけど無いよりはマシ。
泣いてたらジメジメするとか言われる。だから今日は笑っていよう。
お弁当も無事作り終わって、昨日泣いて酷い事になってる顔も化粧で何とか誤魔化せた。
天気も良いし、きっとひとつくらい良いことがある、なんて気合いを入れて学校に行ったのに……。
2年の教室がある廊下は人で溢れかえっていた。
「おはよー彩音、なんか通れないね。何かあったのかな?」
「あ、優衣おはよー。なんだろうね」
なんてのんびり話していた矢先、飛び込んでくる声は少し異様なもの。
「ナメた真似してんじゃねぇよ!!人を傷付けてそんなに楽しーんかよ!!」
その叫び声はウチのクラスの女の子。ツケマたくさんの、巻き毛のかわいい理奈ちゃんだった。
優衣と顔を見合わせて、人だかりを掻き分けてやっとの思いで理奈ちゃんのところまで行けば、理奈ちゃんやクラスのみんな、対立側には悠斗にお弁当を渡していたケバゴンと取り巻きがいた。
「理奈ちゃん?おはようどうしたの?」
「彩音ちゃんは何も気にしなくていい。アタシら彩音ちゃんの味方だよ、こんな女の戯言なんて聞かなくていいから」
こんな女、ケバゴンの事だろう。
そっちを向けば、掲示板にあり得ない写真が貼ってあった。
「え……?」
それは多分昨夜。自宅の玄関で私が祐介を招き入れているところ。
それから海で寄り添って、アングルのせいでキスしてるみたく写ってる。
でも、抱きしめ合っている写真が何枚も……。
「酷い、誰がこんな……」
まるでパパラッチ。
芸能人ばりのスクープみたく貼られて、私はまたしても祐介に迷惑をかけてるんだと落胆した。
「酷いのはあんたでしょー。しぶとく悠斗の彼女の座にしがみついてさ、次は祐介と浮気?てゆーか、ツートップ狙うとか、顔しか見てないヤな女〜。それに勘違いしてるでしょ?どーせ悠斗も祐介もヤらせてくれるからあんたを」
「ヤらせてなんかないっ!!」
私なんかどうでもいいよ。でも、祐介はもっとちゃんとしてる男だから。言われたくない。