カウントダウン
「チョ、彩音ちゃん!あたしら本当にムカついてんのに何はしゃいでんの?」
「だってさ!体操着ボロボロとか事件だよ事件!!」
「そーだよぅ。事件だからムカついてんじゃん!今犯人見つけさせてるからもう少しの我慢だよ!って、無理して元気に振る舞ってる?」
カシャカシャと写真を撮ってる私を励ますように理奈ちゃんは巻き毛をくるくる弄りながら聞いてくるけど、悲しくはないよ。
「大丈夫だよ」
ただ新しい体操着を買う余裕はないかな。そのくらい。
人より多く貰える者は、人より多く妬まれる。
誰かがそんな事言ってけど、祐介と悠斗に関わったくらいでこれだけの事をする人の気持ちは理解出来ない。
新しい物を買うのにはどれだけの働きをしなければ手に入らないのか、その価値を分からない人が多いのかな?
あと一年半お世話になるはずだった体操着。ごめんね、私が中途半端な事してたから。
「理奈ちゃん、大丈夫。彩音はこんな事くらいじゃ負けない!どMだから。それに、私たちが一緒にいる。移動教室の時狙われたのは失敗だったけど、次は同じ失敗しないようにしよう!」
優衣は私の手を握りしめて、そんな風に励ましてくれる。男子たちは空気みたいな感じだけど、女子は結束力が一段とまして、何度も励ましてくれて、体操着をボロボロにされたり嫌な手紙を貰ったりする事よりも、そっちの方が心を震わせて、涙が溢れた。
私は、やっぱり生まれてきて良かったんだ。だってこんなにもたくさんの友達が助けてくれる。
私も、たくさんの優しさを返していきたい。
「泣かないでよも〜。あ……彩音、悠斗君きたけどどうする?帰ってもらう?」
優衣に言われてドアの方をみたらじっとこっちを見ている悠斗と目があった。
「大丈夫。私、もう逃げないから」
「そっか。でも無理しないでね」
手を握ってくれた優衣にありがとうと一言伝えて、私は悠斗の方へ向かった。