カウントダウン
「なーんも良いことない」
「若い女の子が溜め息なんてつくんじゃないよ」
バイト先についてタイムカードを押せば、パート歴10年のベテランの奥田さんが声をかけてくれた。
私の、第2のお母さん的存在。寧ろ実の母親より頼りになる。
「さっさと仕事行くよ」
「はい」
サバサバしているところが好き。
以前悠斗が女の子をしたがえて来店した時、悠斗をバッサリと叱ってくれた。
それ以来バイト先には女の子を連れて来なくなったくらい奥田さんは頼りになる。
「いらっしゃいませ〜2名様ですね」
そして、出て早々幸せそうな顔で優衣と彼氏さんが来店した。
この時間帯は色んなお客が来る。優衣たちみたいなカップルや、友達同士、外回り風なサラリーマン、親子連れ、訳アリ風なカップル。
一人の客も。…………あれ?
「ご注文はお決まりですか?祐介」
「……メロンソーダ」
「あ!!」
「……んだよウルセーな」
「祐介の事、どこかで見たことあるって思ったら毎週来てるよね?毎回メロンソーダでこの席で」
「悪いかよ」
「悪くないよ。いつもありがとうございます。少々お待ちください」
そっか、何で今気付いたんだろう。奥田さんのお気に入り君じゃないか祐介って。
いつも私達のいる場所から見える2人掛け用の小さなテーブルの場所(奥田さんが故意的に目の保養のため案内している)に座っていて、本を読んでいたり携帯を弄ってたり。
やっぱり場所が違うと分かんないものなんだなー。
「相変わらずイケメンだよねーうちの息子もあれくらいの男だったら……」
奥田さんはフキンを消毒しながら溜め息をついている。
「奥田さんは乙女ですね」
「彩音ちゃんは男の選び方を間違ってるよあーゆーの選びな」
「えーでも彼、口悪いですよ?」
「あんたの男は態度が悪い」
「…………」