カウントダウン
最悪な彼氏の誘惑
3…2…1、後少しで屋上の扉を開ける。誰も居なかったら叫びたいっ!
扉のドアノブに手をかけた時、不意に引き寄せられた。
「え?ちょっ、やっなにっ!?」
無理に振り返らされて目の前が暗くなる。鼻腔をくすぐったのは大好きな香りだった。
「何?悠斗……」
暴れてもびくともしなくて、抱きしめた悠斗の腕は腰をグッと引いて離れない。
苦しくて上を向けば、切れ長の綺麗な漆黒の瞳が揺れていた。
「他の男に食べさせんなよ。何考えてんだよ、てか昨日もかよ」
「昨日はたまたま。今日は、悠斗がいらないっていったら祐介が欲しいって言ってくれたから」
「はっ、呼び捨てかよ。別にいいけど。祐介は俺のダチなんだからあんまり迷惑かけんな」
「迷惑なんてかけてな……っ……ぁ……」
壁際に追い込んで、無理矢理塞ぐようなキス。
呼吸は鼻から。キスの初心者じゃないからそれは分かってる。
けど、悠斗のキスはいつも強引で、性急で、激しいから、追い付けない。
空気を求めて無意識に口を開けて、それが罠にかかったかのように悠斗を招き入れてしまう。
「…っや、はると……っ…まっ…」
耳に届くのは学校では不釣り合いな卑猥な水音。
キスの温度にも速度にも私はいつも置いていかれる。
「彩音は誰の?」
「悠斗……の?」
唇が少し離れた。でも、ほんの少し動けばまた重なり合いそうな距離。
「なに聞き返してんだよ。彩音は俺の。だから俺の意見だけ聞けばいーの。分かった?」
「わ、私だって!美味しいって言ってくれる人にごはんを食べて貰いたいよ」
ヤバい泣きそう。
泣いたら負け、泣いたら負け、そう心で繰り返してるのに。
悠斗は私の気持ちなんて考えてない。にやりと口角を上げて、それからまた唇を奪う。
奥の奥まで絡められて、縛られる。