カウントダウン
「彩音のグロスが誘った」
なんて言って笑う。
……違う。私の好きな笑顔は、こんな悪い顔じゃなくて、もっと屈託のないもの。
悠斗は、どうしていつも偽りの笑顔なんだろう。
「メシまだだろ?テイクアウトしてきた」
私の知らないどこかのお店のもの。二人分あるから、待っていてくれた。
「ありがとう」
素直に嬉しくて、笑顔でお礼を言えば、私の大好きな屈託のない笑顔でこっちを見る。
時間が止まったみたいに思えて、早く食えよと急かされて食べたごはんは、今までで一番美味しく感じた。
何か会話をする訳じゃないのに、ただ見つめ合って食べているだけなのに、今までの冷たさが感じない。
その事に、本当なら喜ぶべきだと思うのに、私はぬか喜びの恐怖を何度も味わったから、素直にはなれなかった。
「最近、彩音元気ないな」
「そう?」
「ああ。てか、怒らなくなった」
「面倒じゃなくていいでしょ?」
「やめとけ。高2でいい女なんて演じきれねぇよ」
「いい女になんてなるつもりないけど。てゆーか、悠斗も高2じゃん」
「……彩音、何考えてる?」
「んー……そうだな、悠斗にとって私って何だろうな?って毎日思ってるよ」
笑みは溢さず淡々と、会話が重なる。私なんか気にもとめないって思ってたのに、悠斗は私の気持ちの変化に気付いてる。
私の質問に、どう答えるのかな?
彼女って言ってくれる?
それとも都合のいい女?
とくに考えてない?
なんて答えるんだろうとおもってチラッと見たら、嬉しそうに笑った。
「唯一無二の女。付き合い始めからずっとそう思ってるよ」
意外な言葉に、思考が止まった。