カウントダウン


「そっか……」


だったら何で浮気するの?セフレって何?女好きはもう治らないの?


なんてぶつけたい言葉を“そっか”の3文字に込めた。


だって、言っても意味がない。今まで散々そんなやりとりしてきた。


だけど結局言いくるめられて、相手にされなくて、時には抱かれて、それで終わり。


言っても無駄。
そして、今の私も言いくるめられるような無駄話をしたくなかった。



あぁ、やっぱりもう終わりなんだな……なんて、こんな時思う。



「彩音は?俺をどう思う?」


その返事に、何て答えれば正解が貰えるの?


何て言って欲しいの?


イライラする。言ってしまおうか、愛してないって。


言ってしまえば楽になる。




楽に、なるのに



「いつまで私を傍に置いてくれるのかな?って思う。無理してるんじゃないかなって……」



バカな私。


“アンタなんて大嫌い、いつでも別れられるんだから”


心は必死に叫んでるのに、どういう訳か喉と口がそれを許してくれなくて、勝手に違う言葉に変換して言葉にした。



「バカだな彩音は。俺の隣りはずっと彩音だけだ」



「そっか、良かった」


あぁ、今日も信じたフリをして笑った。



悠斗へ向ける笑顔は、きっとファミレスでやってる営業スマイルより胡散臭い。


だけど、悠斗はそれさえも見抜けなくて、悪魔みたいな笑顔を私に向ける。


お前チョロいな、みたいな笑顔。




「彩音、食べ終わったら風呂入れ。沸かしてあるから。今日は泊まっていけ」



「え?明日学校……」


「制服あんだからいいだろ別に」



「……分かった」



またこうやって、気紛れに振り回される。





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