カウントダウン



もうかれこれ10ヵ月は一緒にいるから、急なお泊まりだって大丈夫なくらい私のものがある。


だから泊まっていったって何の問題もない。


だけど、浴室にいる私は不安でいっぱいの気持ちになっている。





私の不安は、ただひとつ。

お風呂を上がったら、抱かれるかどうか。


どうしてだろう。別れを決めた2ヵ月前は、別れる日までカレカノらしくしようって決めたのに、拒否したい気持ちが膨らんでる。







「彩音、何分入ってると思ってんだ。早く出ろ」


「ああ、ごめん」



でも結局急かされて、言いなり。



今日のバスタイムは、嫌な感情を含む1日の全てを流せなかった。





「ごめん、疲れてて……」


「寝てるかと思った。髪、乾かしてやるからこっちに来いよ」


「……うん」


ドライヤーを持って前に座れば、長くて綺麗な指が髪に触れた。


「風邪引くなよ、お姫様」


「お姫様ってなによ」


「執事と姫みたいだろ?てか、こんな事俺にやらせんのってお前くらいだよ」


「そうなの?」


「そうだよ」


「嬉しい。ありがと」


鏡越しにお礼を言ったら目があって、微笑む悠斗に不覚にもドキッとした。


「なに?惚れ直した?」


「は?」


「照れるなって」


普段私の事なんて見向きもしないのに、こんな微かな反応を見逃してはくれない。


「バッカじゃない?」


「照れた彩音も俺、好き」




乾くたびに髪がサラサラと揺れる。そこに唇を寄せる悠斗は、最後の一本まで乾かしてから、自分もお風呂に入るとバスルームに消えた。




< 37 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop