カウントダウン


他愛もない話を繰り返して、笑い合って、ふざけ合って。



なにやってるの、私。
完璧に悠斗のペースにはまってる。



「もー乾いただろ?焦がす気かよ」


「焦げればいいと思う。チリチリになって女の子に嫌われればいいよ」


「ははっ。彩音、嫉妬?」


「……っ……なんでもない」


「隠すなよ、かわいいから」



雰囲気に呑まれて、私はまた感情を晒していた。



もうやだ。
私、まだ……好き。



苦しいよ。




私ってなんでこんなにバカなの?



「彩音……ベッド」


「え?」


急に真剣な顔をして、悠斗は指を絡めて手を引いて私をベッドへ誘う。



私の身体は、まるで操られたかのようにそのまま寄り添って、ベッドにつくと流れのままキスに反応した。




「彩音……」


キスの合間に聞こえる呼び声は、とっても優しくて。


私はやっぱり悠斗が好きだと確信する。






押し倒されて、組み敷かれて、背中に腕を回したら急に



“記念日に囚われてて本当にいいの?”




祐介の声が脳内に響いた。



「悠斗、ちょっと待って!」



まだ好きと確信したのに、拒否したい自分も確かにいる。



「どうした?」



「あ、あの……ダメ。き、今日は無理な日」



取り繕った、嘘。
女の子の事情をかざして、私は逃げた。




心の中が戦っている。
もう悠斗で傷付きたくない自分と、悠斗に愛されたい自分。



私の心に2つの相反する感情があって、これが苦しさの原因。



傷付きたくない自分が拒否をしたのに、今は拒否した事によって、また傷付くのを恐れてる。




ヤりたい時にヤれない女はいらないと言われるんじゃないか



また、他の女のところに行くんじゃないか




凄く脅えてる自分がいる。



もう、いや。逃げ出したい。





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