カウントダウン
夢の中の私は幸せそうに笑っていた。
悠斗を信じるよ。
なんて言って。
「ムリっ……何を信じるの?……って夢?」
暗い室内。携帯を確認したらまだ2時を過ぎた頃だった。
隣りからは意外にも悠斗の寝息が聞こえてくる。
悠斗の匂いと温もりに包まれて、つい変な夢を見ちゃった。
なんだか目が冴えちゃった。
ベッドから降りようと思っても身体に絡まる悠斗の腕が外せない。
無理に動かせばいいんだろうけど、起こしたら悪いし。
ぴったりとくっつく悠斗は、なんだか子供みたいにあどけなく寝ていた。
だから、仕方なく傍にいる。そう……仕方なく、そのつもり。
変な夢のせいで、頭の中は悠斗との出会いから今までの出来事で埋め尽くされちゃった。
最初に出会った、5月の雨。お婆さんに傘を貸す優しい彼。きっと、私にとっての恋をしたきっかけはこの出来事だった。この時は気付かなかったけど。
2度目に会った時は、休みの日に公園で子供たちとサッカーをしていた。
大きな声を出して、屈託のない笑顔を振り撒いて、一人一人に優しく語りかけていた。
この時は悠斗が女遊びの激しい男で有名なのは知ってたけど、取り巻きのお姉さんたちと一緒にいる時とだいぶ印象が違くて、ドキドキが止まらなかった。
みんなの知らない悠斗を、私は知ってしまったって、無意味に喜んだ。
だけどこの時は、例えて言うなら芸能人に憧れているような、ただ見てるだけで満足な気持ちだったし、彼女になりたいとも、せめて触れ合える関係だけでも、とかそんな事はひとつも思わなかったんだ。