カウントダウン
「強いて言えば、俺が早く店に行きてーんだよ、悪りぃか」
「……悪くない、よ?ははっ」
「何笑ってンだよ」
「いや、案外かわいいトコあるんだなって思って。日曜日楽しみにしてる」
「はぁ!?男にかわいいとか言うな。バカにしてんの?」
「してないよ。ありがとう祐介。なんか、私この頃祐介に助けてもらってばっかりだね」
気が付けばまた、涙が止まってた。ハンカチで取り合えず顔を拭いて、汚しちゃった祐介の制服もついでに拭けば、深いため息が頭上から聞こえた。
「……ごめん」
「許さねぇ」
「許さないって……祐介がギュッて強く抱きしめたからこうなったんじゃん」
「バッ……!!知るかよ、罰としてこれから俺の弁当作ってこい」
「はぁ!?なにそれ」
すっかり涙の止まった目で睨み付ければ心なしか祐介の顔が赤く感じた。
「なにテレれてんの?」
「テレれてねぇよ!強く抱きしめたとかバカ、そんなんじゃねぇよ。彩音が泣くから」
「へっ!?」
赤くなった理由は、私の事抱きしめちゃったから?
慣れた手つきで引き寄せたから、てっきり得意分野なのかと思ったら、案外照れ屋さんなんだ……。
落ち着かない様子でキョロキョロしたり、急に椅子に座ったり。ポケットをあさって何かを出したと思ったら携帯をいじり出した。
「……赤外線。送受信出来る?」
目を合わせないで、突然差し出す携帯は、私の機種と同じだった。
「うん、携帯色違いだね」
隣りに座って何気なく交換したら今度はジッと見つめてくる。なんなのよ……。
「軽い」
「はぁ?なにが」
「彩音は簡単に男と個人情報を交換するんだ」
「……何言ってんの?祐介が先に交換しようって携帯出したんじゃん。それに私だって誰にでもホイホイ教えてる訳じゃないよ。祐介だったから教えたんだよ。気に入らないなら消してよ。私は消さないけどね!!」
何でだろう。祐介に会う度、かわいくない私しか披露出来てない気がする。……普段かわいいかと聞かれればそうでもないけど。