カウントダウン
「秘密?……共有……なにを?」
「あぁ、俺的には見せびらかしたいけど、まずは内緒で俺に弁当作れ。で、毎日ここで一緒に食べる。その他はまた考えるから」
「……うん、そのくらいなら」
「日曜、俺と会うことも悠斗には内緒にしろ。いいな?」
悪いことはしてないと思うけど、正直後ろめたさがハンパない。でも、悠斗はこの事以上の事を平気でやるんだ。
そう思うと、秘密を共有する事がなんだか悠斗に勝てる要素だ、なんて馬鹿みたいなことが頭に浮かんで…
気が付けば、誘いに乗ってる自分がいた。
「交渉成立。んじゃ、ゆびきり。ほら、小指だせよ」
「え?あ……うん」
ゆびきりなんて小学校以来。差し出された小指にそっと自分のを絡めたら、何故か心臓が煩くわめいた。
なんでだろうなんて考えながらゆびきりげんまんの歌を唄えば目が合って、“指切った”をする前にピタリと止まった。
ただ黙って見つめて
そしたら、祐介は私の小指を引き寄せて、そのままそこに唇を押し当てた。
「彩音はまだ悠斗のものだから、小指で我慢する」
熱情が見え隠れする祐介の瞳と言葉。
指切ったと離れる光景を、ただぼんやり見ていた。
「じゃあ、約束な。俺、先に戻るよ。彩音もサボってばっかいねぇで早く教室戻れよ?」
「あ……うん。分かった」
祐介の唇に触れた小指が
熱い。
準備室を出ようとする祐介はドアの前で立ち止まって、疑問に思ってそのままじっと見ていたら、急に振り返る。
「俺だって、簡単に女に携帯番号教える訳じゃねぇからな。悠斗と一緒にすんな」
その一言だけ残して、祐介は教室に戻った。
一人取り残された私は、キスをされた小指をただじっと見つめて、熱くなる頬の不可解な現象に、驚く事しか出来なかった。