カウントダウン
「おはよー昨日のドラマ見たー?」
毎朝必ず元気に声をかけてくれるのは親友の優衣。全部の事情を知っていて、私が別れる覚悟をしているのも全部話した。
だから、悠斗の事は私から話さない限り一切話題に出さないようにしてくれる。
「おはよーごめん、見なかった」
「録画したから今度ウチで一緒に見よ」
「うん!」
ほら、悠斗だけじゃない。依存なんてしてない。私はちゃんと、他に楽しい事を見つけてる。
そう思わせてくれるのはいつだって優衣。明るくて、活発で、そしてちっちゃくてかわいい、そんな優衣の存在に感謝してるよ。
一日の全ては悠斗だけじゃないんだよ。私だって、ちゃんと……。
でも、4時間目終了のチャイムを聞くと、反射的に浮かぶ。
悠斗と、お昼休み。
「一緒に行こうか?」
「だいじょーぶ。今日は一緒にって気まぐれもたまにあるから」
昼休みを悠斗と過ごさなくなったのはいつからだろう。お弁当を届けるだけ。
気まぐれに一緒に食べる時もあるけど、最近ではごく稀な事。
「あたしは沙織たちと教室で食べるから、何かあったら戻ってきな?」
『何かあったら』
その意味は、悠斗の周りを囲む女子たちの事。
遊び好きなのは、それだけ女の子が寄ってくるって事で、悠斗は本当にかっこいい。
さらさらの茶色い髪に、オニキスのピアス。切れ長の瞳は漆黒で、すっと通る高い鼻に薄い唇。180cmの身長と、引き締まった体。
立ち止まって暫く見てしまうくらいかっこいい。
モテるのは当たり前。
傍によれば相手をしてくれるから悠斗を好きな女子は私の存在を知っていても堂々とくっつく。そして私に嫌味を言ってくるから、優衣はそれを心配してくれてる。
嬉しいよ、一人じゃない。
「ありがと優衣。もう馴れたから」
嘘。
本当は苦しい、そして悔しい。