カウントダウン
「彩音ちゃん!彩音ちゃん!メロンソーダ王子が私服姿でご来店よ〜」
「うわっ!!良いのは見た目だけって言われてるだけあってカッコイイな。てか、凄いオシャレ……」
脱兎の如く奥田さんは祐介に近付いていつもの席に案内をした。
その瞳はハートマーク。
……旦那はどうした。
なんだか話が弾んでるみたいだけど(奥田さんだけ)ニコニコしながらこっちに戻ってきた。
「彩音ちゃん、ご指名だよ〜。メロンソーダ持ってってね。いーなー若いって」
「へっ!?奥田さんの楽しみなんじゃないですか?」
「あーいいの、いいの。私の場合はこっそり見つめて愛でたいだけだから。それにしても珍しいわね。メロンソーダ王子は来店する曜日はいつも決まってるのに」
「よく見てますねー」
「ほら、王子お待たせしないで、早く行っといで」
「はーい」
何が指名なのか分からないけど、取り合えずメロンソーダを持って行ったら、ふてぶてしい態度で遅いと一喝された。
「お客様、申し訳ありませんがウチでは指名制度はございません」
「うるせぇよ。今日……終わるまで待ってる」
「なんで?」
「いーから」
「分かったよ。てか、私服姿、カッコイイね。あーピアスもいつものと違う。これカッコイイね。私もこーゆーの欲しい、どこで買った?」
まじまじと見たことなかったから今ごろ気づいたけど、祐介の右耳には5つの穴がある。軟骨は痛いんだろーなー。あ、左は3つ。
祐介だってけっこうなどMじゃん。私だって、両耳一つずつなのに。
「近い。てか、悠斗と同じシャンプーかよ。ムカツク」
「へ?シャンプー?匂い?」
そりゃ今日まで悠斗のウチのシャンプー使ってたけど。ムカツクって事は、お泊まりの事だよね?
やっぱり悠斗の事狙ってるのかな?悠斗のマンションに行けるのは私だけだし。
祐介に聞いてもカミングアウト……してくれないだろうな。