カウントダウン
「バカじゃねーの。早くしろ」
「バカじゃないから。てか彼女さんに悪いからいいって。用件だけでいいって」
女心がつくづくわからないヤツだよ。やっぱり悠斗と友達だから考え方は同じなのかな?
「いねーよ彼女なんて」
「え?じゃあコレは誰の?」
ピンクのメットを指させば祐介は大きなため息をついて呆れた表情で見つめてきた。
「それ彩音の。今日買ってきた」
「へっ!?私の!?なんで……」
「秘密、共有すんだろ?これから出掛ける事もあるし、ああ……油性ペンででっかく名前書く?」
「書かないよ!!恥ずかしいなー。でもいいの?」
「今さら返品出来ねぇよ。早く乗れ」
「うん。ありがとう」
なんか分かんないけど。
なんで私用のメットをわざわざ買ってきたの?
でも、ちょっとだけ、嬉しかった。なんで嬉しかったのかも、よく分かんないけど。
「ギュッと掴まれよ、振り落とされたいの?ああ、どMちゃんだからそーゆープレイが好……」
「ギュッと掴みました!!安全運転でお願いします!!」
「……」
いちいち貶さないと駄目なワケですか祐介は!!
どこに向かうのかも知らされずにギュッと捕まれば、ついた先は大型スーパー。夜12時まで営業とデカデカと看板に書いてある。
「なんでスーパー?」
「弁当の材料。買いに行くぞ」
「え?」
有無なんて言わせない。
そんな態度で店内に向かう祐介を追いながら、私はただ頭の整理が出来ずにいた。
「ちょっと待って!!」
カゴを片手に私に注文するピアスだらけの無愛想なイケメン。
タイムセールを知る主婦や仕事帰りのサラリーマンが集まるスーパーに、なんとも場違いな感じもするけど、私に話しかける内容がお弁当を楽しみにしてる雰囲気だったから、私の心が凄く喜んでる。
もしかしたら悠斗狙いで私に近付いたのかもとか、疑惑もあったけど、そんなのを抜きに私の料理を楽しみにしてくれている。
それが伝わるから、私を必要としてくれるって、分かるから……それが嬉しい。