カウントダウン
悠斗のクラスは隣の隣。
微妙なこの距離は曖昧な私達みたいで、お弁当を届ける足取りは鉛のように重い。


昨日の今日だし、何を言われるか分からない。


カレカノって、こんなだっけ?なんて考えると自虐的な笑みが浮かんだ。



「あ……」


女の子と腕を組んで前から歩いてくるのは間違いなく悠斗。



私に気付いたのに楽しそうな笑顔を浮かべて、腕を組んだまま近づいてきた。



「弁当いらねぇ」



たった一言。
反応出来なかった私に、“女”を主張するような香りをまとった女子が嘲笑うように口を開いた。


「ごめんね彼女さん、なんか悠斗がアタシの手料理が食べたいって言うから。彼女さんの料理、マズイんでしょ?苦手ならもう無理しない方がいいんじゃない?」


時間が止まったみたいに感じた。


食べた事のないアンタにマズイなんて言われたくない。


唯一の救いは、周りに人がいなかった事。


悠斗を見上げても、何も言わなかった。



「分かった」





涙は、渇れる事なんてないんだね。


必死に堪えて走り出す私に、悠斗に絡む女の子が品のない笑い声を上げた。





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