カウントダウン
祐介が隣にいなくて良かった。美空が想い人だったら、これ以上の苦痛はないよね。
祐介は今のままの祐介でいてほしいから、傷付いたり落ち込んだりして欲しくない。
悠斗との関係は、いつも自分の事ばっかり考えてた。傷付きたくない、とか、どうして私の傍にいてくれないの?とか、そんな自分の感情ばっかり。
でも祐介に関しては、私の気持ちよりも祐介の方が大切だって思う自分がいる。
「彩音、そのチョーカー貸せ」
「えっ?」
奥から二人が出てきたと思えば、いきなり祐介は私の首にチョーカーをつけた。
「ちょっと祐介、支払いがまだなんだけど」
「もう払った。それと、耳……出せ」
「え?何が?……っ……」
祐介の指が、そっと耳たぶに触れる。
「何?耳は感じちゃうとか?」
「ちがっ……ばかっ、信じらんない!」
「ふーん、顔真っ赤だけど?」
目の前にはいつもみたいな意地悪な祐介。隣に美空さんがいるのにどういうつもり?
「やっぱり仲良しなんじゃん」
にこにこしてる美空さんからはまたそんな事。
「ちょっ、祐介!!だから何してんの?」
「この前俺のピアス見て欲しいって言ってたから。同じの付けたけど?ほら鏡。ピアスもチョーカーも今日の服と合ってんじゃん」
いつの間にか支払いを済まされていたチョーカーと、祐介の耳についているピアスと同じのが鏡にうつった。後ろでは祐介の笑顔。
「似合ってるよ」
いつもの祐介とは思えない言葉に、何も答えられなかった。
「何固まってんだよ」
「だって、お金」
「いらねぇよ。俺が買いたかったから買っただけ」
「でもプレゼントされる理由もないし。こーゆーのは好きな人にしてあげなって」
例え報われなくても。
振り返って祐介を見ればまた大きなため息。
「っとに鈍感女。今日俺の話全然聞いてなかったのかよ」