カウントダウン
「雅治ぅ……っく……」
「うわっ……何してんのアンタ……」
「っ、誰!?」
ここには誰もこない。
なのに、場違いな男の声が聞こえた。
「雅治って、名前までつけてんの?人体模型に」
ドン引きな顔をしながら話し掛ける男子生徒。
ゆるくパーマ掛かったアッシュブラウンの髪に、何個か連なるプラチナのリングピアス。そして着崩した制服。
ブルーのカラコンの瞳は、私をじっと見つめている。
どこかで見たことがある。どこで?
「あれ?悠斗の彼女じゃん。へぇ、人体模型に抱きつく変態ちゃんなんだ」
「違っ!!」
ドン引かれるのはしょうがない。だって雅治は最新技術を駆使したリアル人体模型。
それに抱きつく私も私。
でも、妙に落ち着くし、当たり前ながら口答えもしないから私は好き。
名前までつけた。
「で、変態ちゃんはなんで泣いてんの?」
「変態じゃない!!ってか、悠斗の知り合い?」
テリトリーを侵害された上に悠斗の知り合い。そして変態呼ばわりするこの男にイライラする。
イライラして、涙が止まった。
「あー……どうせその涙は悠斗絡みだろ?ヒデェ扱いされてんのにしがみついてるどMちゃん。あ、やっぱアンタ変態じゃん」
質問にも答えずに、どMだの変態だの。
名前も知らない目の前の男は、初めて話す私に容赦なかった。
ムカツク。