カウントダウン
「また一緒に登校?どーなってんの?」
学校に着けば優衣からおはようの後に続く言葉がそれだった。
「たまたまだよ。
……あのね、今日正式に別れを告げようと思うの。でもね、こんな日に限って悠斗に捕まっちゃって、好きだよなんて言ってきて、繋いだ手を離してくれないの。ワケ分かんないよ……」
「彩音……」
朝からこんなヘビーな話を受け入れてくれてありがとう。
なんとも言えない表情の優衣は、ただ無言で私を抱きしめてくれた。
「彩音のしたいようにしな?でも後悔するようなのは駄目だからね」
「うん。ありがとう。私、放課後ちゃんと伝える」
放課後、ちゃんと伝えるって決めたのにね。
こんな日に限って、悠斗は私に執着した。
「呼んでるよ〜」
それは休み時間毎に。
今まで滅多になかったのに悠斗は私を呼び出した。
いつもならたくさんの女の子に囲まれてる時間なのに、ただ私の髪を撫でたり、肩を抱いたり、約束出来ない約束をしてきたり。
「久しぶりに昼飯一緒に食わねぇ?」
「……悪いけど、約束してるから」
「優衣チャンと?」
「……うん」
あんなにすがり付くくらい大好きで離したくない人だったのに、こんなにも居心地が悪い。
心情の変化は、私をこうも変える。
でも、冷たく突き放す事は出来なかった。
肩を抱くその腕を払えなかった。
もっと前にこんな風にしてくれたなら……なんて、そう思う自分もいた。
しっかり、しなくちゃ。