ごめん、好き。
なにも知らない。
自分の気持ちだって。
「分からないのに、なんで?
なんでキスなんかしたのよ!?」
涙を瞳いっぱいにためたその目が俺に向いている。
一グシャッ
何かが落ちる音がした。
一瞬、沙織の持っていた箱が落ちたのかと思った。
けど、沙織の手にはしっかりと箱が握られていた。
俺は恐る恐る横に目線を送る。
「……ユカ…」
先に呟いたのは、沙織。
俺はただ立ちすくみ、呆然としていた。