ごめん、好き。
一カラン
「おはようございます」
「おっす、沙織」
店の扉を開けるとヘラヘラと笑いながら掃き掃除をしている亮くんがいた。
「聞いたよ~、また喧嘩だってね」
「そうなんだよ。俺が浮気したとか言うんだよ」
呆れたようにため息をこぼす。
そんな亮くんを横目にあたしは仕事着に着替えにいった。
あたしとユカの彼氏である亮くんは、バイト仲間。
たまたまバイト先に遊びにきたユカは亮くんに一目惚れして付き合い始めた。
それはもう、電光石火のごとく。
「は~、なんか疲れちゃったな」
「そんなこと言って、すぐ仲直りするくせに」
「…うん。なんか、お前が応援してくれてるならって思うんだよね」
この人は、なにを言うんだ。
「そゆこと言ってないで、手を動かす」
なにも考えちゃダメ。
考えたって仕方ないんだから。
あたしは無心を装いながら、コーヒーの豆をひき始めた。