ごめん、好き。
「あ、あぁ…」
妙な沈黙。
俺は沙織の顔を見ないようにケーキを手渡した。
「オーナーから。」
「…ありがとう!あたしの好きなやつだ」
嬉しそうに笑いながら、俺にお礼を言う。
「あっ、あがって?一緒に食べようよ」
「いや、いい。」
これ以上居たら、俺が耐えられない。
この変な空気。
俺は帰ろうとした瞬間。
「なんで、…したの?」
「え……」
沙織は重い表情をしながらも俺を真っ直ぐにとらえていた。
分からない。
そんな言葉では片づけられない。
「亮君、あたしの携番とかアドレスとか知らないでしょ?」
俺はゆっくりと頷いた。
「あたしは知ってるんだよ、亮君の。
前にオーナーから教えてもらったの
もちろん、送ろうと思ったけど、送れなかった
なんでだか分かる?」
分かるわけがない。
沙織がなにを思って、そんなことを言うのかも。
どんな気持ちで俺を見ているのかも。