パステルカラーの恋模様

こんな狭い個室に、今、二人っきりなんだ。

そう自覚したら、急に…。


ヤバイ、唇が乾いてきた。

あたしは慌ててリップをポケットから出して、念入りに塗った。




唇……。



先輩と喧嘩した時の、唇の傷。

そして、観覧車で……重なった唇。



あたしは、カッと顔が熱くなるのが分って、顔を背けた。



どうしよう、どうしよう。

あ~もう、早く助けにきてよ!バレちゃうよ。



顔が赤いのも見られちゃう。

速い鼓動も聞こえちゃう。



ぎゅっと目をつぶった時、啓太が気の抜けた声を出した。


「何か、甘い匂いがする」

「へ?あ~!」


あ、そうだ。大判焼き!

あたしは手に持っていた大判焼きの袋を高く持ち上げた。


「啓ちゃんにおみやげ買ってきたんだ。大判焼き。今、食べる?」

「食べる!何味?何味?」



よかった、喜んでくれたみたい。
< 104 / 257 >

この作品をシェア

pagetop