パステルカラーの恋模様
こんな狭い個室に、今、二人っきりなんだ。
そう自覚したら、急に…。
ヤバイ、唇が乾いてきた。
あたしは慌ててリップをポケットから出して、念入りに塗った。
唇……。
先輩と喧嘩した時の、唇の傷。
そして、観覧車で……重なった唇。
あたしは、カッと顔が熱くなるのが分って、顔を背けた。
どうしよう、どうしよう。
あ~もう、早く助けにきてよ!バレちゃうよ。
顔が赤いのも見られちゃう。
速い鼓動も聞こえちゃう。
ぎゅっと目をつぶった時、啓太が気の抜けた声を出した。
「何か、甘い匂いがする」
「へ?あ~!」
あ、そうだ。大判焼き!
あたしは手に持っていた大判焼きの袋を高く持ち上げた。
「啓ちゃんにおみやげ買ってきたんだ。大判焼き。今、食べる?」
「食べる!何味?何味?」
よかった、喜んでくれたみたい。