パステルカラーの恋模様
「美園、別に嫌だったらいいんだよ」
目が合った時、言われた言葉に、あたしの心はぐらっと揺れた。
きしきし、いう。
何かが崩れそうになる。
「恋人のフリなんて、その場の思い付きだったし。よく考えれば、現実味のない契約だったし」
何言ってんの?
「美園と一緒にいれて…すごい楽しかった。借りなら、十分返してもらったよ。だから…」
「だ、誰もそんな事言ってない!」
あたしは思わず立ち上がって声を張り上げた。
啓太は、目をぱちくりさせた。
周りの人も、何事かとこっちをじろじろ見ている。
あたしは、ちょっと恥ずかしくなって、そろそろと腰を落としながら、啓太の方に体を向けた。
「あたし、続けるよ。恋人のフリ。お母さん達帰ってくるまで。啓ちゃんに、もう来んなって言われない限り、続ける!」
ああ、これは、勝手に口から出てきた本音。
等身大の気持ち。
「……みそ…」
「も、文句ある!?」
もうヤケクソだ。
ぎゅっと唇をかみ締めたら、血の味がした。
そしてすぐに、また涙がこぼれてきた。
痛くて。
唇が、心が。