パステルカラーの恋模様

「美園、別に嫌だったらいいんだよ」


目が合った時、言われた言葉に、あたしの心はぐらっと揺れた。


きしきし、いう。

何かが崩れそうになる。



「恋人のフリなんて、その場の思い付きだったし。よく考えれば、現実味のない契約だったし」



何言ってんの?




「美園と一緒にいれて…すごい楽しかった。借りなら、十分返してもらったよ。だから…」

「だ、誰もそんな事言ってない!」



あたしは思わず立ち上がって声を張り上げた。

啓太は、目をぱちくりさせた。


周りの人も、何事かとこっちをじろじろ見ている。




あたしは、ちょっと恥ずかしくなって、そろそろと腰を落としながら、啓太の方に体を向けた。



「あたし、続けるよ。恋人のフリ。お母さん達帰ってくるまで。啓ちゃんに、もう来んなって言われない限り、続ける!」



ああ、これは、勝手に口から出てきた本音。

等身大の気持ち。



「……みそ…」

「も、文句ある!?」



もうヤケクソだ。

ぎゅっと唇をかみ締めたら、血の味がした。



そしてすぐに、また涙がこぼれてきた。




痛くて。


唇が、心が。
< 130 / 257 >

この作品をシェア

pagetop