パステルカラーの恋模様
愛美さんと目があった。
あたしは、何も言わず小さくお辞儀した。
愛美さんも、それに相応する程度のお辞儀をして、すぐに啓太の目を見た。
「啓、久しぶり。……元気?」
「……」
啓太は黙っていた。
口が少しもごもご動いているのを見ると、何か言いたいんだろうけど…
言わなくていいよ、啓ちゃん。
答えなくていいよ、何も喋らなくていい。
そんな風に思ってるくせに、あたしは無理して笑って啓太の背中を叩いた。
「ほら、啓ちゃん!何か言わなきゃダメじゃん、失礼だよ……?」
何言ってんの、あたし?
意味わかんない。
こんな時に、お人良し過ぎるってば!
あたしは、手をそのまま啓太の背中に当てたまま、愛美さんの方を見た。
愛美さんは、そんな様子を見て、心なしか少し寂しそうな、悔しそうな表情をした気がした。
それから、すぐに頷いて大きく笑った。
「…いいや!久しぶりに会えてよかった。また、遊びにいくね、家!」
そう言って、くるっと背を向けた。
あっ…。
あたしは、咄嗟に今この、愛美さんの状況を自分に置き換えてしまった。
もし自分だったら……すごい辛いと思う。
寂しい気持ちになると思う。