パステルカラーの恋模様

「あのっ!」


そう思ってる内に、つい声をかけてしまった。

口端をくいっとわざとらしくあげたまま、愛美さんが振り返った。



「啓太は今、一人で…マンションに住んでるんです。だから」

「うん、知ってる!」



ドクン。




“知ってる”?





何でだろう。

もしかして…。あたしは啓太を見た。



今も、メールしてる……?

啓太は何ともいえない複雑な表情で、視点が定まらない。



「あの、あなた、啓のお友達…かな?」

「えっ?」



友達…?

違う。


じゃあ、彼女?

それも……違う。だって…。



言葉に詰まってしまったあたしに、愛美さんはまた笑いかけた。



「あたし、啓と前付き合ってた、桃井愛美っていいます!いつもマナミとか、アイミとか間違えられるけど、正しい読み方は、アミなんだ」


アイミだと思ってた…。

愛美さんは、まったくねぇ、と後ろ頭を触った。



あたしは、うっかり、愛美さんの笑顔にドキっとしてしまった。

可愛いって普通に思ってしまった。

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