パステルカラーの恋模様
「……啓もね、最初、あたしの名前間違って覚えてたんだよ。アミなのに、あたし」
そう小さく言って、愛美さんは、熱い視線を啓太に送った。
ねぇ、そんな話、あたしにしてどうすんの?
何がしたいの?何が言いたいの?
そんな目で啓ちゃんを見てどうすんの?
何がしたいの?
あたしは思わず拳を握り締めた。
その時、愛美さんの友達が「愛美~」と声をかけた。
皆、ハッとする。
そして、あたしはホッとした。
「あっ、はーい!じゃ、またねっ」
啓太をじっと見てから、目の前のあたしにニコっと笑いかけ、小さく頭を下げた。
あたしも思わずお辞儀し返してしまった。
そして、彼女はパタパタと友達の元へ戻っていった。
黙りこくったあたし達を見て、鮫島はさっきよりも、もっと気まずそうな顔で動揺していた。
「あ…俺、み、美紀!迎えにいってくるわ!迎え…!」
そう言って、そそくさとその場を後にした。
ずるいよ、鮫島。
あたしも逃げたいよ。
啓太は、静か過ぎるくらいに、黙りこくって、目を伏せていた。
その長いまつげを見て、いつかの保健室を思い出した。
『愛って何?』
いやだ。
こんな啓ちゃん、見たくない。
今、元カノとの思い出とか、啓ちゃんの頭の中に溢れているのかもしれないと思うと、やりきれない気持ちになった。