パステルカラーの恋模様
何か……変だよ、啓ちゃん。
あたしも。
不自然だよ。向いてないよ。
そうやって、演技するの。
顔に出てるもん、全部。
あたしも啓ちゃんも、俳優とか女優じゃない。
ましてや、ピエロでもないんだから、演技はへたっぴで当然だし、しなくたっていいんだよ。
なのに、人はどうして自分じゃない誰かを演じようとするんだろう。
むなしいのに。
どうして、仮面を被るんだろう。
きっと何かを繋ぎとめるために、嘘をつくんだね。
「啓ちゃん」
「んー」
伏し目がちで、わざとらしく口端をあげる啓太。
「どっか、いっちゃわないよね、啓ちゃん」
そう言うと、少し黙ってから、啓太が「ぶはっ!」と笑った。
「俺、そこまで子供じゃないから大丈夫だよ。それに、迷子になったら、絶対、美園が大捜索してくれるでしょ?張り紙したり、放送流したり」
「なっ何を根拠に……」
「美園だから」
一瞬、時がとまった。
お互いが映る瞳の奥。