パステルカラーの恋模様
「…アンタ、よくもあの時、帰ってこなかったわね」
「だ~か~ら~、悪かったって!逆に俺らが行ったら気まずいんじゃねぇかなぁと思ってさぁ…。俺、ああいうシリアスな場に居合わすの苦手だし…」
シリアスって……。
鮫島は情けない声を出し、後ろ頭をかいた。
「あっそ」
「それにあの後……ほら、なっ!」
「は?」
あたしが怪訝な顔を向けると、鮫島は透明人間をハグして、アホみたいに『チュー』ってした。
あー、ソユコトねぇ…。
元旦に予約なしでよく入れたな。
「ね、可愛かったね、愛美さん」
「……言うか?ソレ」
「……自分だって惚れてたくせに」
「……お前なぁ。それも…何で言うかぁ?」
意気消沈の鮫島。
あたしも何だか、また凹み…。
あー、啓ちゃん、会いたいなぁ。
あたしがもし啓ちゃんのマフラーやネクタイだったら、ずっと一緒にいられるのに…。
何て、なかなかむなしい部類の妄想だわね。