パステルカラーの恋模様

カチャン。



食器がこすれる音がする。

また血の気がひく。





やめてよ。

そんな事、聞かないで。




「か、彼女です!」




あたしは思わず、そう言い放っていた。

言わなきゃって思った。



啓太は少し驚いて振り返った。

愛美さんは、それを聞いて、捨てられた子犬のような目で啓太を見た。




「そうなの、啓」



啓太は小さく頷いた。




「そうだよ」




あれ、おかしいな。おかしくない?



あたしは啓ちゃんの彼女なんでしょ?



なのに、この部屋に、今、啓ちゃんと愛美さんしかいないみたい。

哀しい目で見つめあう二人しかいないみたい。




啓太は、また背を向けて、スポンジに洗剤をつけた。




愛美さんは、口をへの字に曲げて「帰る」と立ち上がった。


「あっ…」


あたしは思わず反応してしまう。

愛美さんは、もうあたしに笑いかけてくれなかった。
< 183 / 257 >

この作品をシェア

pagetop