パステルカラーの恋模様
カチャン。
食器がこすれる音がする。
また血の気がひく。
やめてよ。
そんな事、聞かないで。
「か、彼女です!」
あたしは思わず、そう言い放っていた。
言わなきゃって思った。
啓太は少し驚いて振り返った。
愛美さんは、それを聞いて、捨てられた子犬のような目で啓太を見た。
「そうなの、啓」
啓太は小さく頷いた。
「そうだよ」
あれ、おかしいな。おかしくない?
あたしは啓ちゃんの彼女なんでしょ?
なのに、この部屋に、今、啓ちゃんと愛美さんしかいないみたい。
哀しい目で見つめあう二人しかいないみたい。
啓太は、また背を向けて、スポンジに洗剤をつけた。
愛美さんは、口をへの字に曲げて「帰る」と立ち上がった。
「あっ…」
あたしは思わず反応してしまう。
愛美さんは、もうあたしに笑いかけてくれなかった。